第15回 私はドゥーラ。こころの眼で赤ちゃんとお母さんを見守りたい
やさしさが詰まったブルー・ポピー・シードのケーキ
私が個人的にお世話になっているドゥーラのメンター(師)であるニコラは4人のママで、まさに‘ちょっと頼れるとなりのおばちゃん’的な、どこまでもあたたかい人。
毎日大忙しのはずなのに、まわりの女性たちのことを絶えず気遣っているコミュニティー全体のハハ〜(母)という感じ。そして月に一度は焼き菓子でみんなをもてなす。
先週ニコラの家で頂いたブルー・ポピー・シードのケーキにも、そんな彼女らしいやさしさが詰まっているように私には感じられた。まだほんのりとあたたかくて、かむたびに種がプツプツとはじけて、新鮮なブルー・ポピーのフレイバーが口いっぱいに広がる。
イギリスのホームバースでドゥーラの存在は重要
イギリスでホームバースを産み場に選んだ場合、国民保健(NHS)でカバーされ無料なのはいいが、担当の助産師さんが病院出産と同様、ひんぱんに交代する。ホームバース専門のコミュニティー・ミッドワイフは1グループたいていの場合6〜10人くらいで編成されているため、妊婦がよっぽど努力でもしない限り、お産が始まる前にメンバー全員に会えることはない。
その結果、陣痛が始まっても、電話するたびに見知らぬ助産師さんがやってくることになったりする。だから、ここでは一貫ケアを提供できるドゥーラの存在がより重要なのかもしれない。
「どうしてお母さん、そんなに心配するの」
そんな慌しい学びの日々、こんな不思議なことが今朝あった。
朝ごはんを食べながら私が、来月4歳になる娘に向って「ねぇNさんの赤ちゃんまだ逆子なんだって。早く頭が下にこないかなー」と言うと、
娘は「こころの眼でちゃんとみてるの?」と聞いてきた。
「えっ、なんでそんなこときくの?」と私が聞き返すと、娘は自分の両目を指先で押さえながら、「お腹の中の赤ちゃん、目でみえてなくても、こころでみてればいつでも安心してられるのに。だいじょうぶなのに、どうしてお母さん、そんなに心配するの」と言う。
ウ〜ンまぁ確かにそうなんだけどねーと、その時は娘に軽く相槌を打ったものの、Nさんのことを想うと、毎日、逆子体操やプール通いで必要以上にせわしない生活を送っているのが気の毒に思えてしかたがなかった。
小さな彼女が教えてくれた
ところが数日後、弾んだ声のNさんから電話があり、
「赤ちゃん逆子じゃなかったんです!私てっきり赤ちゃんの膝を頭と勘違いしてて、それを言ってあったもんだから先生も私のお腹をしばらく触ったあとで‘きっと逆子でしょう’って。でも昨日になって超音波をとってみたら最初からぜんぜん逆子じゃなかったことが判ったんです!」との報告が。
あっぱれ娘よ!
お腹の赤ちゃんは目に見えない存在だから、まわりはつい必要以上に心配してしまうけど、こころの目がちゃんと開いていると、見守る側の気持ちはいつも穏やかで、安心していられるのだということを小さな彼女は教えてくれた。
ありのままの赤ちゃんを受け止める
逆子であっても、ギリギリで頭が下にくることもあるし、今回のようにまわりは大騒ぎしていても実は逆子じゃなかったということだってあるだろう。逆子体操を欠かさずしても、ずっと逆子のままの子もいる。
でも最終的に、どんな姿勢であれ、それは赤ちゃんの選んだ在り方なわけだし、そこを周囲がおおらかに受け止めることは、ありのままの赤ちゃんを受け止めることでもある。
これからもドゥーラとして、こころを開いて、感性を磨いて、見えないものを感じられる力をもっともっと高めていきたい、そう今までになく思わされたできごとだった。
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木村章鼓(きむら あきこ)
ドゥーラ(産婦とその家族を支援する女性、というような意味)有資格者。
2年間の課程を修了し、SBTA(スコティッシュ・バース・ティーチャーズ・アソーシエーション)認定、産前産後教育者としてバース・リソース・センターにて、妊産婦向けの講座を受け持つ。 エジンバラ大学大学院 医療人類学修士号取得。UK在住。
スコットランドはUKの一地方であり、独自の文化をもつ。 面積はイギリス全体のおよそ三分の一を占める。ケルト文明の影響も色濃く伝説や神話が豊かに語り継がれている。
街角やレストラン、空港などで、タータンチェックの民族衣装(プリーツスカート)を身にまとったおじさまが、重そうなバグパイプを肩から下げ、のっしのっしと 歩く姿はスコットランドならではの光景。
エジンバラは街全体がユネスコの世界遺産にも登録されている。「UK」(United Kingdom=連合王国)は、イングランド、スコットランド、ウェールズ およびアイルランドから構成されている。詳しくは、スコットランド総領事館のHP もしくは英国大使館のHPをご覧下さい。
