第4回 ホワイト・ナイツよ、照らしてくれてありがとう
綿菓子のように浮かんでは溶けていく
昨晩は、この国で迎える初めての夏至だった。
真夜中過ぎにようやく暗くなって、午前2時ごろには朝に向けて早々と白み始めるスコットランドの空に、今の私ほど救われている人間はいないと思う。
つい先日、長い時間と労力をかけてあたためてきた仕事が見事ポシャってしまったというのに、気持ちがこんなにも穏やかなままなのが自分でも不思議なくらいだ。
白夜のおかげで、娘を寝かしつけた後も、たっぷりと時間がある(ように感じられる)から、読みたかった本を読んだり、聞きたかったCDを最初から最後まで聴けたり、いろんなことを徒然に考えられる。
日本で活動していた時のこと、待っていてくれる家族や大切なともだちのこと、これからのこと。。。明るい太陽のしたでは思い耽ることのないようなことごとが、窓越しに差し込む薄明かりのもとでは、綿菓子のようにふんわかと、心に浮かんでは溶けていく。
そうやって、居心地のよい時がしばし流れてから娘の寝顔を見下ろすと、たまたま生かされていることの不思議をしみじみと想う。
『どんな人にも、生まれてきた目的がある』
雲は、真夜中でも太陽の光がないだけで、刻一刻と動きを止めず流れていると分かったり、暗闇があるからこそ星が瞬いていたことに気づいてハッとしたり。そんな当たり前過ぎることに驚いてしまう自分にまた驚いたりする。
白々とした白夜の光はそんなふうに、現実を万華鏡さながら、くるくると円を描くようにして映し出してくれるものなのだ。
こうして静かに過ぎていく『今』にも、また、結果的には報われなくても自分なりに向きあった『過去』にも、大切な意味があると、こころから思える夜は、いつまでも私を包んでくれるやわらかい光以外に、いったい何に感謝すればいいのだろう。
『どんな人にも、生まれてきた目的がある。人生で起きるすべてのことは偶然にみえるけど、すべては必要があって起きている。そして誰もが、自分自身の人生のストーリーをあらかじめ書き終えてからこの世に生まれてきている』なんていうけれど、今の時期に地球のこの位置に自分が在るのも、目的あってのことなのだろう。
自分のしたいことを探す心の旅
そして、今回のエジンバラ滞在には、私の人生にとってとても重要な何かが控えている『予感』がする。
それは、かすかに響く耳鳴りのように、この国に住むことが決まって以来、どこかでずっと感じてはいたけれど、ずっと無視してきた感覚。でも、これほどまでに言いようのない感謝の気持ちに満たされて夏至を越えた今、それは思いきって予感という言葉にしてしまっても大丈夫なくらい、自分のなかで確かなものとなりつつある。
人生は、自分のこころの声にシンプルに従っていればいいのかもしれない。
そうやって耳を澄まして、こころの声をキャッチして、自分が、こころの底からほんとうにしたいと思うことをしていくだけで、ほんとうは、いいのかもしれない。
振り返ると、私は今までヘンに片意地を張ってがんばり過ぎていたところがあったかもしれない。
自分の本当にしたいことって、なんなんだろう。
3月に日本を発って、まだ雪のちらつくエジンバラ入りし、ホテル滞在をへて住む家を見つけ、生活も少しずつ落ち着いてきた今、ようやくそれを探すこころの旅に出るころなのかもしれない。
どうしても行きたい場所
せっかくスコットランドに住んでいるのだから、ピンと感じるものがあれば、もっと迷わずにこれからはどんどん試してみようかなあと思う。その感じる力を高めるためにも、自然との一番身近な架け橋である木々や草花とたっぷりふれあいたい。娘を先生にして無心に遊んでいるうちに、なにか見えてくるかもしれない。
そのうちに時間をつくって、いくつかの場所に行ってみようとも思っている。
自分がどうしても行きたい場所がこの国にはいくつかあるのだ。
そのひとつ、北極に限りなく近いオークニー諸島には、さっそくこの週末に行くことにした。
2歳の娘を連れてどこまでまわれるか分らないが、オークニー諸島の島々にある、紀元前2500年から2000年の間に建てられたと考えられているストーンサークルや、新石器時代の集落跡、墳墓などを家族3人、気ままに訪れてみたい。
子連れで、最果ての島めぐり、どうなることか。
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木村章鼓(きむら あきこ)
ドゥーラ(産婦とその家族を支援する女性、というような意味)有資格者。
2年間の課程を修了し、SBTA(スコティッシュ・バース・ティーチャーズ・アソーシエーション)認定、産前産後教育者としてバース・リソース・センターにて、妊産婦向けの講座を受け持つ。 エジンバラ大学大学院 医療人類学修士号取得。UK在住。
スコットランドはUKの一地方であり、独自の文化をもつ。 面積はイギリス全体のおよそ三分の一を占める。ケルト文明の影響も色濃く伝説や神話が豊かに語り継がれている。
街角やレストラン、空港などで、タータンチェックの民族衣装(プリーツスカート)を身にまとったおじさまが、重そうなバグパイプを肩から下げ、のっしのっしと 歩く姿はスコットランドならではの光景。
エジンバラは街全体がユネスコの世界遺産にも登録されている。「UK」(United Kingdom=連合王国)は、イングランド、スコットランド、ウェールズ およびアイルランドから構成されている。詳しくは、スコットランド総領事館のHP もしくは英国大使館のHPをご覧下さい。
