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パックスナチュロン 長谷川 治さんのお話より
合成洗剤を飲んでしまったお父さん

 40年前までは洗濯用洗剤と同じ成分の台所用洗剤が発売されていました。ある家庭で、夜、お父さんが赤ちゃんにミルクを飲ませようと思って、粉ミルクをつくったところがなかなか飲まない。そこでお父さんが代わりに飲んだ。でも、実はそれは粉ミルクと間違えて台所用洗剤を溶かしたものだったのです。

 目の見えない方は触って認識するという感覚が研ぎ澄まされていますので違いが分かりますが、ふだん目が見えている人は見えなくなると、触ってみる、匂いでみるという感覚をふだんあまり鍛えていないので間違いが結構あるわけです。

 そのお父さんは2〜3時間後、苦しくなって医者に行ったのですが、とうとう4時間後に亡くなりました。

事件をきっかけに成分変更

 当時、国会でも取り上げられて、ちょっとでも間違って飲むと死ぬようなものを台所用洗剤として許していいのかと大問題になりました。残された奥さんも当然、裁判に訴えました。

 調査の結果、台所用洗剤の化学中毒死と分かり、合成洗剤メーカーは、現在使われている「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム」という成分に変えました。

合成洗剤で焼き肉!

 ところが6年前、中学生が修学旅行で長野県に行った時、夜、ホテルでバーベキューをしました。ホテルでは油も洗剤も業務用の一斗缶で買ってそれを小さい容器に移し替えて使いますが、両方ともやや透明の黄色い色をしているので違いがほとんど分からない。ホテルが油だと思って間違って出した合成洗剤を鉄板に塗って、中学生は肉を焼いて食べてしまいました。どうもレモンの風味がしたと(笑)。修学旅行の中学生は気にしないで食べてしまった。

たった数グラムが運命の分かれ道

  食べた約200人のうち、半分が10分もしたらお腹が痛い、熱が出てきた、手足が腫れてきたということで、すぐに病院行きになりました。翌日の新聞には、台所用洗剤200グラムを間違えて食べたと書いてありました。つまり、平均1グラムのところを2〜3グラム食べた生徒は病院行きになり、0.5グラムしか食べなかった生徒は行かずに済んだ。台所用洗剤の成分をやや改良されたものに変えたとはいっても、たった数グラムで熱が出たり、手足が腫れたりして病院に行かなければならない、そんなものが依然として使われているのです。

全成分表示になったけど…

 「弱酸性メリット」や「ビオレU」「ダブ」という商品があります。

 2001年に法律が変わり、全成分表示になりました。それをよく見ると、「ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム」と書いてあります。

 つまり台所用洗剤と同じ成分がシャンプーやボディーソープにも使われているということです。台所用とシャンプーは成分が違うというイメージがあるかもしれませんが、実際は香料が違う程度です。

 そして、その他の成分にはわけの分からないカタカナ言葉でありとあらゆる化学物質がいっぱい書いてあります。この中には、川に流したら魚が死んでしまうから有害である、と国が認めた成分が堂々と使われています。それはいくら国が有害だと認めても、禁止にしているわけではないからです。

モイスチャーミルク成分?

 台所用洗剤の成分をベースに十何種類の化学物質を入れて、最後にクエン酸という、これは悪いものではないんですがそれを入れまして、「はい、弱酸性です」といっているのがビオレUの中身です。

 「ダブはモイスチャーミルク成分4分の1配合」と宣伝してています。

 ところが全成分を見るとミルク成分はまったくのゼロ配合です。それなのにここまで言い切るのは相当勇気がいる(笑)。これはあまりにもひどいというか、考えられない。

 一般消費者は、例えば表示にある「ポリクオタニウム」というのがたぶんミルク成分だろうなどと思うわけです。ところが、このポリクオタニウムはダイオキシンより毒性が強いというデータが出されています。

 有害物質がシャンプーやボディソープに

 表示成分の化学物質名が非常に難しく、国の役所間でも混乱があります。

 環境省と経済産業省では「ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリド」が有害物質であるといっています。ところがシャンプーは厚生労働省の管轄なので、こちらでは同じものが「クオタニウム」と名前が変わっています。

「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」も有害化学物質に指定されていますが、それがシャンプーの成分になると「ラウレス」と名前が変わってしまいます。

 シャンプーやボディーソープに有害化学物質が入っていても、裏側の表示ではなかなか気が付きません。こういう事態になっています。

石けんをまちがえて飲んだら…?

  石けんは約5000年前に、油にアルカリ(木を燃やすとできる灰や灰汁)をあわせて偶然できたものでした。

 はじめは油と灰を混ぜてつくっていましたが、その後、海水の塩から採れる塩化ナトリウム(食塩)のナトリウムと反応させてつくるようになりました。今は海水の塩と油からつくっています。

 ここに台所用の液体石けんがあります。これを間違えて飲むとどうなるか?

 この容器が哺乳ビンと似た形をしていて、上のポッチを開け、逆さにしたら液が出てくるので、赤ちゃんが間違えて飲むことがあり得ます。

 石けんを飲むと赤ちゃんは泣きます。あまり美味しくないからです。しかし、おいしいか、おいしくないかと、安全か危険かというのはまったく次元が違うものです。

実験をしてみましょう

  石けんを飲んだ場合を想定して実験をしてみます。

 今、ビーカーに石けん液を入れました。透明の液体ですが、そこにお酢を入れます。

 胃の中に胃酸がありますが、その酸と出合うとどう変化するのかを見るためです。ビーカーのなかにお酢を入れ、かき混ぜます。すると真っ白く濁ります。

 そしてだんだんと上の方にベトベトした白い固まりが浮いてきます。それは石けんの原料であるパーム油あるいはヤシ油(アブラヤシやヤシの実から採った油)です。

 パームの実とヤシの実は、真ん中にジュースが入っていて、その周りに果肉があって、それを搾るとヤシ油が採れます。

 石けんは胃酸という酸に合うと原料の食塩と油に戻ってしまいます。ですから胃の中に入ったということは、いわばドレッシングのようなものになるわけです。

 ところが、合成洗剤を間違えて飲むと、そういう現象は起きません。さて、どうなるでしょう?



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